販売用の物件LP(ランディングページ=1つの物件だけを紹介する縦長の紹介ページ)を作ろうとして、見積もりを取った段階で止まってしまった——不動産会社の方からよく伺う話です。制作会社に依頼すると1本あたり数十万円、納品まで数週間。売れ筋の物件ほど、その数週間で状況が変わってしまいます。

一方で、物件LPそのものは、実は載せる情報の種類がほぼ決まっているという特徴があります。物件概要、間取り、周辺環境、価格・収支、問い合わせ先。毎回ゼロから設計しているのではなく、同じ型に別の物件を流し込んでいるだけ、という見方もできます。

ここが生成AI(文章やコードの下書きを自動で作れるAI)の効きやすい条件です。本記事では、物件LPを外注せず、自社で作れる状態にする4ステップを解説します。プログラミングの経験は不要ですが、「AIが作ったものを人が必ず確認する」という前提は最後まで外しません。

物件LPを外注し続けると何が起きるか

外注そのものが悪いわけではありません。自社サイトや、長く使う分譲プロジェクトのページは、プロに任せる価値があります。問題は、1件ごとに寿命の短いページを、毎回同じ費用と時間で作っている場合です。

典型的には、次のような詰まり方をします。

  • 費用がかかるので、本当に力を入れたい物件にしかLPを作れない
  • 着手から公開まで数週間かかり、広告を出したいタイミングに間に合わない
  • 価格変更や成約後の「商談中」表示など、小さな修正にも依頼と待ち時間が発生する
  • 結果として、更新されないまま古い情報のページが残る

特に最後の一つは問い合わせの質に直結します。掲載条件と現況がずれたページは、対応の手間だけを増やします。

「AIで内製する」とは具体的に何をすることか

ここでいう内製は、Webサイトの制作技術を社内で身につけることではありません。1枚のHTMLファイル(ブラウザで開ける、ページそのもののファイル)をAIに作らせて、以後は中身の文字と写真だけを差し替えていくという進め方です。

ChatGPTやClaudeといった生成AIは、こうした1枚完結のページを作るのが得意です。デザインの指定と載せる項目を伝えれば、スマートフォン表示にも対応したページの下書きが出てきます。作ったファイルは、無料〜低額の公開サービス(Netlify、Cloudflare Pagesなど)に置けば、その日のうちにURLとして配信できます。

大事なのは、2件目以降は「作る」のではなく「差し替える」作業になるという点です。1件目に時間をかけて型を固めておくと、以降のLPは物件データを入れ替えるだけになります。当社の支援先では、同じ考え方を提案資料に当てはめて、作成時間が60〜90%削減という変化が出ています。

物件LPをAIで作る4ステップ

1

載せる項目を先に決めて「型」を固定する

最初にAIへ依頼するのはデザインではなく構成の確定。上から順に何を置くかを決める。

人が決める

2

物件データを1枚の表にまとめる

項目名を左、内容を右に置くだけでよい。分からない項目は空欄のままにし、推測で埋めさせない。

人が用意する

3

AIに1枚のページを作らせる

構成・掲載内容・表示の優先・配色を指定する。慣れれば1〜2時間の作業。

AIが下書き

4

公開し、反響を見て1か所だけ直す

キャッチコピー、最初の写真、問い合わせボタンの位置——どれか一つを変えて変化を見る。

人が判断する

2件目以降は「作る」のではなく「差し替える」作業になります。1件目に時間をかけるのはそのためです。

ステップ1:載せる項目を先に決めて「型」を固定する

最初にAIへ依頼するのは、デザインではなく構成の確定です。売れているマイソクや自社の反響が良かったページを見ながら、上から順に何を置くかを決めます。よくある並びは次の通りです。

  1. キービジュアル(外観写真)+物件名+一言の訴求
  2. この物件の要点3つ(駅距離・利回り・リフォーム済など)
  3. 写真ギャラリー(外観・室内・水回り)
  4. 物件概要(所在地・面積・築年・構造などの表)
  5. 周辺環境・アクセス
  6. 価格と収支の目安(投資用の場合)
  7. 問い合わせフォームまたは電話番号

この並びを決めてしまえば、あとは毎回同じです。「毎回考え直さない」ことが内製化の本体で、AIはその型を形にする道具にすぎません。

ステップ2:物件データを1枚の表にまとめる

次に、上の項目に対応する情報をExcelやスプレッドシート1枚に整理します。項目名を左の列、内容を右の列に置くだけで構いません。ここを口頭やメモの寄せ集めのまま進めると、AIが空欄を埋めようとして実在しない情報を書いてしまう原因になります。

数字と固有名詞は、必ず人が用意する。これは物件LPに限らず、AIを業務に使うときの共通ルールだと考えてください。分からない項目は空欄のままにして、「空欄は推測で埋めず『—』と表示する」とAIに明示しておくと安全です。

ステップ3:AIに1枚のページを作らせる

型と表がそろったら、AIへの指示は次のような形になります。

  • 「不動産の販売用ランディングページを、HTML1枚で作ってください」
  • 「構成は上から順に(ステップ1の並び)としてください」
  • 「掲載内容は添付の表のとおり。表にない情報は書かないでください」
  • 「スマートフォンでの閲覧を優先し、写真は縦に大きく並べてください」
  • 「配色は自社サイトに合わせて、白基調+濃紺のアクセントにしてください」

出てきたファイルをブラウザで開いて確認し、「要点3つをもう少し上に」「電話番号をスマホでタップできるように」といった修正を会話で重ねます。ここまでで、慣れれば1〜2時間の作業です。

完成した指示文は、毎回同じやり取りを繰り返さずに済むよう保存しておきます。Claudeの「スキル」機能で手順ごと登録する方法は、マイソクの自動作成をAIで実現する方法で解説しています。考え方はLPでも同じです。

ステップ4:公開し、反響を見て1か所だけ直す

公開後にやることを決めておくと、内製は続きます。おすすめは、問い合わせ数を見ながら、直すのは毎回1か所だけという運用です。キャッチコピー、最初の写真、問い合わせボタンの位置——どれか一つを変えて、変化を見ます。

外注ではコストが見合わず諦めていた微調整を、その日のうちに試せる。これが内製の最大の効果です。

注意点:AIが書いてはいけない部分を決めておく

物件の広告表示には、宅地建物取引業法や不動産の表示に関する公正競争規約(不動産業界の広告ルール)による決まりがあります。AIが生成した文章をそのまま公開しないことを、社内ルールとして先に決めてください。特に次の点は、公開前に人が必ず確認する箇所です。

公開前に人が必ず確認する箇所
確認する箇所何を見るか
誇大・断定表現「必ず値上がり」「絶対にお得」といった表現をAIは平気で書く。全削除が前提
取引態様・免許番号・所在地などの必要表示事項抜けていないかを、表と突き合わせて確認する
駅からの徒歩分数や面積表記ルールに沿っているか。AIの計算を信用しない
写真の権利AIで生成した室内イメージを、実物の写真のように見せない
個人情報売主や入居者の情報を指示文に入れない
問い合わせフォーム送信先と個人情報の取り扱い表記を自社の運用に合わせる。AIが置いたダミーのままにしない

また、問い合わせフォームを設置する場合は、送信先と個人情報の取り扱い表記を必ず自社の運用に合わせてください。AIが例として置いたダミーのままにしないよう、公開前チェック項目に入れておきます。

まとめ:1件目に時間をかけ、2件目から回収する

物件LPの内製でつまずくのは、たいてい「1件目をいきなり短時間で作ろう」としたときです。逆に、1件目で構成と指示文をきちんと固めた会社は、2件目以降が驚くほど速くなります。作るものが毎回同じ形だからです。

まずは、直近で反響の良かった物件を1つ選び、ステップ1の「載せる項目の並び」を紙に書き出すところから始めてみてください。それが決まれば、残りは差し替え作業に変わります。

不動産業務のどこからAIを入れると効果が出やすいかは、不動産業のAI活用事例まとめで4業務に整理しています。社員が自分で使える状態にするまでの進め方は、AI人材育成研修としてご支援しています。

LP以外の業務も含めた進め方は、不動産会社向けAI導入支援のページで整理しています。

よくあるご質問

Webの知識がなくてもできますか?

ここでいう内製は、Webサイトの制作技術を社内で身につけることではありません。1枚のHTMLファイル(ブラウザで開ける、ページそのもののファイル)をAIに作らせて、以後は中身の文字と写真だけを差し替えていく進め方です。プログラミングの経験は不要ですが、AIが作ったものを人が必ず確認するという前提は最後まで外しません。

作ったページはどうやって公開しますか?

無料〜低額の公開サービス(Netlify、Cloudflare Pagesなど)に置けば、その日のうちにURLとして配信できます。

1件目からすぐ速くなりますか?

なりません。つまずくのは、たいてい「1件目をいきなり短時間で作ろう」としたときです。1件目で構成と指示文をきちんと固めた会社は、2件目以降が驚くほど速くなります。2件目以降は「作る」のではなく「差し替える」作業になるからです。

最初に何から決めればいいですか?

デザインではなく構成の確定です。売れているマイソクや自社の反響が良かったページを見ながら、上から順に何を置くかを決めます。「毎回考え直さない」ことが内製化の本体で、AIはその型を形にする道具にすぎません。

物件データはどう渡せばいいですか?

項目名を左の列、内容を右の列に置いた表を1枚用意します。口頭やメモの寄せ集めのまま進めると、AIが空欄を埋めようとして実在しない情報を書いてしまう原因になります。分からない項目は空欄のままにして、「空欄は推測で埋めず『—』と表示する」とAIに明示しておくと安全です。

公開前に人が確認すべきことは何ですか?

物件の広告表示には、宅地建物取引業法や不動産の表示に関する公正競争規約による決まりがあります。誇大・断定表現、取引態様・免許番号・所在地などの必要表示事項、駅からの徒歩分数や面積の表記、写真の権利、個人情報——これらは公開前に人が必ず確認してください。

問い合わせフォームを付けるときの注意はありますか?

送信先と個人情報の取り扱い表記を、必ず自社の運用に合わせてください。AIが例として置いたダミーのままにしないよう、公開前チェック項目に入れておきます。

外注はやめたほうがいいですか?

いいえ。自社サイトや、長く使う分譲プロジェクトのページは、プロに任せる価値があります。問題は、1件ごとに寿命の短いページを、毎回同じ費用と時間で作っている場合です。